易経(えききょう)は占筮に用いられる書物。『周易』(しゅうえき、Zhōu Yì)または単に『易』(えき)とも言うが、易経とは儒教の基本テキスト五経の筆頭に挙げられる経典である。通常は『周易』に儒教的な解釈による附文(十翼)を付け加えたものを易経といい、『周易』と区別している。
太古よりの占いの知恵を体系化し組織化し、深遠な宇宙観にまで昇華させている。三易のひとつ。
今日なお行われる易占法の原典であるが、『易経』成立当時の占いは現代の軽さとは大いに趣きを異にして、古代にあっては、共同体の存亡に関わるきわめて重要かつ真剣な課題の解決法であり、占師は政治の舞台で命がけの責任をも背負わされることもあった。
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現行『易経』は、本体部分とも言うべき(1)「経」(狭義の「易経」。「上経」と「下経」に分かれる)と、これを注釈・解説する10部の(2)「伝」(「易伝」または「十翼(じゅうよく)」ともいう)からなる。
(1)「経」には、八卦のくみあわせによってできる六十四卦の図象と、その意味について記述する卦辞と、それぞれの卦を構成している6本の爻位(こうい)の意味を説明する384の爻辞(乾・坤にのみある「用九」「用六」を加えて数えるときは386)とが、整理され箇条書きに収められ、上経(30卦を収録)・下経(34卦を収録)の2巻に分かれる。
(2)「伝」(「十翼」)は、「彖伝(たんでん)上・下」、「象伝(しょうでん)上・下」、「繋辞伝(けいじでん)上・下」、「文言伝(ぶんげんでん)」、「説卦伝(せっかでん)」、「序卦伝(じょかでん)」、「雑卦伝(ざっかでん)」の計10部である。
なお、1973年、馬王堆漢墓で発見された帛書『周易』(前漢初期(紀元前200年頃))写本に「十翼」は無く、付属文書は六篇(二三子問・繋辞・易之義・要・繆和・昭力)で構成されていた。
現代出版されている易経では、一つの卦に対して、卦辞、彖、象、爻辞の順でそれぞれが並べられていることが多く、「経」、「彖」、「象」を一体のものとして扱っている。
十翼(易伝)の内容 [編集]
「彖伝上・下」には、「周易上・下経」それぞれの卦辞の注釈が収められている。
「象伝上・下」には、各卦の象形の意味についての短い解説と、その爻辞の注釈が収められている。易占家の間では、前者部分を「大象」、後者部分を「爻伝」、というふうに呼称を区別していることがある。
「文言伝」では、六十四卦のうち最も重要かつ基本の位置づけにある二卦である、乾(けん)および坤(こん)について、詳しい訓詁的な解説がなされる。
「繋辞伝上・下」には、易の成り立ち、易の思想、占いの方式、など、『易』に関する包括的な説明が収められている。
「説卦伝」では、大成六十四卦のもととなる小成八卦の概念、森羅万象をこの八種の象に分類するその分類のされ方が、詳説される。
「序卦伝」には、現行の「周易上・下経」での六十四卦の並び方の理由が説明されている。
「雑卦伝」では、占いにあたって卦象を読み解く際の、ちょっとしたヒントが、各卦ごとに短い言葉で述べられる。着目ヒント集である。
書名 [編集]
この書物の本来の書名は『易』または『周易』であるが、『易経』というのは儒教の経書に挙げられたからで、他の五経が『書経』・『詩経』・『礼経』・『春秋経』・『楽経』というように「経」の字が追加されるのと同様である。一般的に『易経』という場合、後代の注釈書である「伝」を除くことがないので、「伝」までをも含めての1つの書とされることが多いのであるが、本来的には『易経』は卦・卦辞・爻辞部分の上下二篇のみを指す。
この書物の名がなぜ『易』なのか、古来よりさまざまな説がなされてきた。ただし、「易」(エキ)という語がもっぱら「変化」を意味し、また占いというもの自体が過去・現在・未来へと変化流転していくものを捉えようとするものであることから、何らか「変化」と関連すると考える人が多い。
有名なものに「易」という字がトカゲに象ったという蜥蜴説があり、トカゲが肌の色を変化させることに由来するという。
また「易」の字が「日」と「月」から構成されるとする日月説があり、太陽と月で陰陽を代表させているとする説もあり、太陽や月、星の運行から運命を読みとる占星術に由来すると考える人もいる。
伝統的な儒教の考えでは、『周易正義』が引く『易緯乾鑿度』の「易は一名にして三義を含む」という「変易」「不易」「簡易」(かわる・かわらぬ・たやすい)の三易説を採っている。
また『周易』の「周」は中国王朝の周代の易の意であると言われることが多いが、鄭玄などは「周」は「あまねく」の意味であると解している。